チェーン店が支配する未来

よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」活字中毒R。さん)
はてブより。これはなかなか興味深いテーマです。僕がこの文を読んで最初に思ったことは「うわ、老害じゃん」でした。もちろんよしもとばななに対して。居酒屋チェーン店にお酒を持ち込みするという非常識な行いをしておいて、それを咎められたら、自省もせずそのお店の経営姿勢に対する文句を本にぐちぐち書くってどんだけ〜、と思ったんですが、ただ、この話にはそれだけじゃない引っかかりがあります。

この話にはいろんな要素が入っているのでちょっとややこしいんですが、僕が注目したポイントはそのお店がチェーン店だというところなんですね。もしこれが個人経営のお店だったなら、確かにばななの言い分もある程度理解できるというか、店側もその場の判断で臨機応変に対応すればよかったのにね、と思うことができてしまうんですよ。本来なら、チェーン店だって個人経営のお店だって、どちらも同じ人と人とのやり取りです。この違いってどこから出てくるんだろうというのが気になりました。

チェーン店って基本的に薄利多売で、少ないスタッフでたくさんの客をさばくというシステムになっています(問題のお店は閑古鳥だったらしいけど、一般的な話として)。その中で、いちばん何が困るかと言えばイレギュラーな対応を求められることでしょう。イレギュラーな事柄はマニュアルにも載ってないし、POSデータにも登録されていないし、本部にも確認しないといけないかもしれない。そんなことをいちいち対応していたら最大のコストである人件費の大幅ロスになってしまい、ビジネスモデルが崩れてしまうだろう……ということをお客側の立場である僕が無意識に判断してしまい、「チェーン店で変なことやったらややこしいことになるに決まってるのにやったばなながバカ」と言う結論を導き出すに至ったんだなぁ〜ということに気づきました。

で、この話はとりあえず「ばなながバカ」ということで結論付けるとして、改めてこういった融通の利かない世の中の仕組みが正当であるかどうか、と言う話に目を向けてみると、やっぱりそれには疑問を感じずにはいられないんですよね。

老害なんて書いたけどよしもとばななは本の出た当時で41歳。話の中に出てくる物わかりのいい34歳の人と10歳も違わないと言う点にも注目です。わずか10歳足らずでこれだけ認識が違っているということは、それだけ加速度的に”融通の利かない世の中”が出来上がりつつある、ということなのかもしれません。

人を機械的に動かすことしかできないチェーン店ばかりになっていく世の中を想像すると、やっぱりどうしても寒々しく感じてしまうのです。